2018.05.30
コラム
マシーンか?フリーウエイトか?
マシーンか?フリーウエイトか?
◆トレーニング様式
ストレングストレーニングのプログラムデザインにおいてコントロールしなければならない要素を大別すると、エクササイズの種目選択、エクササイズの順序、強度、セット数、休息期間に分けることができます。これらの変数をいかに操作するかによっていく通りもの異なるプログラムが構成されることになるわけです。
なかでも、種目選択は単にエクササイズの名称を挙げればよいというのではなく、筋活動の種類、トレーニングの姿勢、動作の速度や角度といったトレーニングの「特異性」を考慮する必要があります。そしてこの特異性の問題は、実際に具体的なプログラムを作成する段階では、フリーウエイトかマシーンか、マシーンを用いるとすればどんなマシーンを用いるかというトレーニングモード(様式)あるいは方法の選択という問題となります。
◆特徴の把握と判断の視点
マシーンとフリーウエイトの長所と短所については、その経済性、輸送や管理面での扱いやすさという点に加えて、解剖学的な運動の面が1次元か3次元かという点、動作中の負荷の変化、および単関節の特定筋群を個別にトレーニングするかそれとも多関節動作の複数の筋群をトレーニングするかという視点から、安全面やトレーニング効果についても議論されてきました。そして単関節動作によって個々の筋群を集中的に個別トレーニングすることが容易であるという実践的観点から、ボディービルディングやリハビリテーションあるいは障害予防プログラムでさまざまなマシーンが用いられてきました。
最大筋力の獲得という観点でマシーンとフリーウエイトを比較する場合に常に問題となるのは、最大筋力を何のよって測るのかということです。これまでの研究では測定方法によって異なる結果が示されてはいますが、レッグエクステンションやレッグカール等のマシーンエクササイズとフリーウエイトによるスクワットの比較研究を概観すると、一般的にフリーウエイトの方がトレーニングの転移効果が大きいとされています(Stone,1997)。つまり、マシーントレーニングの効果がフリーウエイトを用いたテストに示されるよりも、フリーウエイトトレーニングの効果をマシーンによるテストで確認した時のほうが大きなトレーニング効果を示すということです。
◆スプリント、ジャンプ、アジリティー
パフォーマンスに及ぼすマシーンとフリーウエイトのトレーニング効果の違いやその理由について直接比較した数少ない研究を見てみると、垂直跳に及ぼす影響については、フリーウエイトのほうがマシーンよりも効果が大きいとするもの(Silvesterら,1992;Stoneら,1979など)とトレーニング効果に差がないとするもの(Jesseら,1988;Wathen & Shutes,1980 )がありますが、マシーンのほうがフリーウエイトよりも効果が大きいとする報告は見当たりません。
スプリントのみのトレーニング群、スプリントプラス単関節マシーンエクササイズ群および多関節フリーウエイトトレーニング群を比較した研究でもマシーントレーニングがより大きな効果を示すという結果は示されていません(Sleivertら,1995)。
また自己の体重を用いたアジリティートレーニングと膝関節および足関節のアイソキネティックマシーントレーニングとアイソトニックマシーントレーニングを比較した研究では、アジリティートレーニング群にのみ筋の反応時間の有意な短縮が観察されています(Wojtysら,1996)。
◆クローズドキネティックチェイン
これらの理由として、マシーンエクササイズと比べて多くのフリーウエイトのエクササイズは、第1に複数の筋群が一連の順序で同時に活動する多関節動作であること、第2に運動が三次元の自由度を持ちバランスとコーディネーションが必要となる、第3に下肢の先端に位置する足部が接地して固定されているという特徴を持っています。これらの特徴はクローズドキネティックチェインとよばれ、多くのスポーツ競技動作と共通するものです。さらに各セグメント間の力の伝達や加速特性、姿勢維持のためのバランス調節にかかわる運動司令や固有受容器および運動感覚器官からのフィードバック情報もマシーンよりもフリーウエイトのほうがより競技動作に類似していると考えられます。
筆者等のおこなった大学生アメリカンフットボール選手を対象とした研究(未発表)でも10ヤードおよび20ヤードのスプリントタイムとスクワットおよびハイクリーンの1RMは有意に高い相関を示しましたが、レッグエクステンションやレッグカールの等速性筋力との間には高速・低速とも相関関係は認められませんでした。
これらのことから、競技スポーツのパフォーマンス向上を目的としたストレングストレーニングにおいては、クローズトキネティックチェインの特徴を持つフリーウエイト種目に重点を置くべきだと考えられます。
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◆トレーニング様式
ストレングストレーニングのプログラムデザインにおいてコントロールしなければならない要素を大別すると、エクササイズの種目選択、エクササイズの順序、強度、セット数、休息期間に分けることができます。これらの変数をいかに操作するかによっていく通りもの異なるプログラムが構成されることになるわけです。
なかでも、種目選択は単にエクササイズの名称を挙げればよいというのではなく、筋活動の種類、トレーニングの姿勢、動作の速度や角度といったトレーニングの「特異性」を考慮する必要があります。そしてこの特異性の問題は、実際に具体的なプログラムを作成する段階では、フリーウエイトかマシーンか、マシーンを用いるとすればどんなマシーンを用いるかというトレーニングモード(様式)あるいは方法の選択という問題となります。
◆特徴の把握と判断の視点
マシーンとフリーウエイトの長所と短所については、その経済性、輸送や管理面での扱いやすさという点に加えて、解剖学的な運動の面が1次元か3次元かという点、動作中の負荷の変化、および単関節の特定筋群を個別にトレーニングするかそれとも多関節動作の複数の筋群をトレーニングするかという視点から、安全面やトレーニング効果についても議論されてきました。そして単関節動作によって個々の筋群を集中的に個別トレーニングすることが容易であるという実践的観点から、ボディービルディングやリハビリテーションあるいは障害予防プログラムでさまざまなマシーンが用いられてきました。
最大筋力の獲得という観点でマシーンとフリーウエイトを比較する場合に常に問題となるのは、最大筋力を何のよって測るのかということです。これまでの研究では測定方法によって異なる結果が示されてはいますが、レッグエクステンションやレッグカール等のマシーンエクササイズとフリーウエイトによるスクワットの比較研究を概観すると、一般的にフリーウエイトの方がトレーニングの転移効果が大きいとされています(Stone,1997)。つまり、マシーントレーニングの効果がフリーウエイトを用いたテストに示されるよりも、フリーウエイトトレーニングの効果をマシーンによるテストで確認した時のほうが大きなトレーニング効果を示すということです。
◆スプリント、ジャンプ、アジリティー
パフォーマンスに及ぼすマシーンとフリーウエイトのトレーニング効果の違いやその理由について直接比較した数少ない研究を見てみると、垂直跳に及ぼす影響については、フリーウエイトのほうがマシーンよりも効果が大きいとするもの(Silvesterら,1992;Stoneら,1979など)とトレーニング効果に差がないとするもの(Jesseら,1988;Wathen & Shutes,1980 )がありますが、マシーンのほうがフリーウエイトよりも効果が大きいとする報告は見当たりません。
スプリントのみのトレーニング群、スプリントプラス単関節マシーンエクササイズ群および多関節フリーウエイトトレーニング群を比較した研究でもマシーントレーニングがより大きな効果を示すという結果は示されていません(Sleivertら,1995)。
また自己の体重を用いたアジリティートレーニングと膝関節および足関節のアイソキネティックマシーントレーニングとアイソトニックマシーントレーニングを比較した研究では、アジリティートレーニング群にのみ筋の反応時間の有意な短縮が観察されています(Wojtysら,1996)。
◆クローズドキネティックチェイン
これらの理由として、マシーンエクササイズと比べて多くのフリーウエイトのエクササイズは、第1に複数の筋群が一連の順序で同時に活動する多関節動作であること、第2に運動が三次元の自由度を持ちバランスとコーディネーションが必要となる、第3に下肢の先端に位置する足部が接地して固定されているという特徴を持っています。これらの特徴はクローズドキネティックチェインとよばれ、多くのスポーツ競技動作と共通するものです。さらに各セグメント間の力の伝達や加速特性、姿勢維持のためのバランス調節にかかわる運動司令や固有受容器および運動感覚器官からのフィードバック情報もマシーンよりもフリーウエイトのほうがより競技動作に類似していると考えられます。
筆者等のおこなった大学生アメリカンフットボール選手を対象とした研究(未発表)でも10ヤードおよび20ヤードのスプリントタイムとスクワットおよびハイクリーンの1RMは有意に高い相関を示しましたが、レッグエクステンションやレッグカールの等速性筋力との間には高速・低速とも相関関係は認められませんでした。
これらのことから、競技スポーツのパフォーマンス向上を目的としたストレングストレーニングにおいては、クローズトキネティックチェインの特徴を持つフリーウエイト種目に重点を置くべきだと考えられます。