NEWS新着情報

2018.05.30コラム
トレーニング頻度




◆1週間に何回トレーニングを行うか

一定の期間内にトレーニングを行う回数のことを「トレーニング頻度」と言います。通常トレーニングのミクロサイクルは1週間単位で進行しますので、トレーニング頻度は1週間にトレーニングを行う回数のことになります。

 選手やコーチから、ウエイトトレーニングは週に何回行えばよいのか、どうしても週に1回しかトレーニングの時間が取れないのだけれども、それでは全く効果がないのかという疑問をよく耳にします。もし全く効果がないのならやらないほうがましということになります。逆に少しでも効果があるのなら、全くやらないよりは週1回でもやったほうがよいということになります。また、現在やっているトレーニングで十分効果が感じられるのだが、もっと頻度を増やせばさらに大きな効果が期待できるかどうかという疑問も生じます。このような問題をどう考えればよいのでしょうか?

 これまでに行われた数多くの研究や経験にもとづいて、週に3回というのが最も効果のある基本的な頻度としてテキストや講習会で紹介されています。確かに一般論としては、2日連続にならないようにして週に3回というのが、トレーニングによる筋の疲労を回復させつつ適応を引き出すための最適な刺激を与えることになると言えるでしょう。しかし実際は、セット数、強度、トレーニングをする人のレベル、トレーニング種目等によって週に何回行うのが妥当かと言うことをよく吟味する必要があります。

 ◆スプリットルーティーン

全身の筋肉群に対して1種目づつのエクササイズからなるトレーニングを週に3回行っていた状態から一歩進んで個々の部位に対してより多くの種目とセット数が必要になってくると、1回のトレーニングで全ての種目をこなすことは時間的にも肉体的もさらには精神的にも不可能となります。

そこで上半身のみトレーニングする日と下半身のみトレーニングする日に分け、それぞれを月曜と木曜、火曜と金曜とし週に2回づつ計4回トレーニングする方法がよくおこなわれています。これはスプリットルーティーンと呼ばれる方法で、この方法では、トレーニング頻度自体は週4回となりますが、1つの部位に対する頻度は週2回と逆に減ることになります。それは1つの部位に対する刺激が大きくなるため回復に要する時間が増えるからです。さらに、胸と背中、下半身、肩と腕というように3つの部分に分けてそれぞれを日と木、月と金、火と土に分けるスプリットルーティーン法もあります。この場合、各部位に対する頻度は週2回と変わりませんが、トレーニング頻度自体は週に6回となり、トレーニングを行わない日は1日のみとなります。

このようなスプリットルーティーンが効果をあげている事実から推察すると、一度のトレーニングである程度の量と強度の刺激を加えることができるならば、必ずしも週3回行う必要はないと言うことができます。したがって種目数を限定して十分なセット数をこなすことができるならば、上半身と下半身を1回のトレーニングセッションで同時にトレーニングでき、しかも週2回で十分な効果が引き出せることになります。

逆に、各部位に対して十分な刺激を与えることが必要で、しかもトレーニングに当てる時間や器具の使用が可能であれば週に3回ということにこだわることなく、ほぼ毎日各筋群を集中してしかも短時間でトレーニングを行っていくことも可能となります。

 

◆週頻度とトレーニング効果

では週1回のトレーニングの効果はどうでしょうか?頻度によるトレーニング効果の差を科学的に明らかにするにはトレーニング量や強度といった他のプログラム変数をコントロールする必要があります。数ヶ月にわたって週2回から4回の継続的なトレーニング経験のある男女を被験者として、週1回の頻度と3回の頻度でどのようなトレーニング効果の差が生じるかを検討した研究があります(McLESTER et al.,2000)。

週1回群は1セット目に5RMとなるような重量を用いてレストピリオド2分で3セット行いました。週3回群は3RMで1セットのみとしました。週3回群は3RMの重量を週に3回で合計9回のリフティングを行ったことになります。週1回群は1セット目に5RMですから重量的には週3回群の3RMよりも少し軽くなり、2セット目と3セット目は少し回数が落ち、結果的に週1回群と週3回群の週間トータル挙上回数×使用重量の計算値はほぼ同じとなりました。

これによってトレーニングの量と強度をコントロールした上で12週間にわたり上肢5種目下肢4種目のトレーニングを実施しました。その結果、週3回群は上肢種目の平均1RMで32.4%、下肢では37.4%の向上率を示したのに対し、週1回群はそれぞれ20.2%と23.5%でした。

この結果から、3RMと5RMの差の範囲であれば、たとえセット数が1セットのみであったとしても週に3回のトレーニング頻度を確保することによってより大きな効果が得られることが明らかです。しかし週1回群の向上率は週3回群の向上率の約62%であり、3分の1の週頻度で3分の2の効果をあげています。したがって、週1回しかトレーニングができないのなら意味がないからとやめてしまう必要はないことも明らかです。