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2018.05.30コラム
ピリオダイゼーションの効果

ピリオダイゼーションの効果

【ピリオダイゼーションの効果】

◆仮説としてのピリオダイゼーション

 ピリオダイゼーションとは、シーズン中の最も重要な試合でピークパフォーマンスが発揮できるようにするために、年間のトレーニングをそれぞれ異なる目的と方法をもつより小さな管理しやすい期間に分割する事だということは多くのコーチや選手にとって既によく知られていることです。そしてピリオダイゼーションを用いたトレーニングが効果的である事は、旧ソ連や東独の活躍以来多くの実践で確かめられています。

 ピリオダイゼーションの効果は理論的にはさまざまな説明が可能ですが、実験的証拠となるとまだまだ不十分で、どのようなプログラムが最も効果的か、多くの要因をどれくらいの期間どのように組み合わせてピリオダイゼーションを構成すればよいかといった詳細やその根拠についてはほとんどわかっていないといえます。

 したがって、実際にピリオダイゼーションを作ろうとすると、現在仮説的に提出されているいくつかのモデルや理論に依拠しつつ、さまざまな個別科学の成果と経験をもとにオリジナルなものをつくり出していく事になります。この作業は、ストレングス&コンディショニングの側面だけを見てみても、筋肥大、筋力、パワー、スピード、持久力など複雑な要素が絡み合っており、加えて技術・戦術、メンタル面や栄養も考慮するとなるときわめて複雑なものとなります。

 そのようにして作られたトレーニング計画表は、まるでシンフォニーの楽譜のようだと表現するする人もいるくらいに、多くのファクターが複雑な因果関係で絡み合っていますが、実際のトレーニングとなると選手の身体は一つしかなく、トレーニングの時間も限られていますから、あれもこれもと欲張っても、思ったとうりの効果が出るとは限りません。

 

◆一般的図式の実験的確認

 筋力とパワーを必要とするアスリートのピリオダイゼーションプログラムとしてアメリカで1981年に実験的研究の結果として最初に発表された仮説的モデルは、60年代から70年代にかけての旧ソ連、東欧諸国の成果とマトヴェイエフ理論およびセリエのストレス学説をもとに提出されたもので、今日最もよく用いられているモデルと言えます(Stone et al., 1981)。これは、トレーニング期間を4つに区分するもので、最初に量が多く強度の低いトレーニングを用いる「筋肥大期」、次に、中くらいの量と高強度を特徴とする「基礎筋力期」、3番目に、少ない量で非常に高い強度のトレーニングを中心とする「筋力-パワー期」(維持とピーキングを含む)、そしてシーズンや試合の後に、量・強度ともに低くする「積極的休養期」を置くと言うものです。

 このモデルは、トレーニング期間中ずっと同じ6RM×3セットだけを用いるプログラムと比較実験を行った結果提出されたものです。トレーニング回数は週3回、トレーニング期間は6週間でした。最初の量の多いトレーニングで筋を肥大させるとともに体脂肪率を減らし、その体組成の変化を維持したままその後の量の少ない高強度トレーニングによって、疲労を蓄積することなく、筋力(1RMスクワット)とパワー(垂直跳び)を高めていく事が可能である事を実験的に確かめた最初の研究です。同時にウエイトリフターとハイスクールのフットボールチームでもこの仮説モデルの有効性が確認されました。この結果、「量の多い低強度」トレーニングから「量の少ない高強度」トレーニングへという図式が筋力・パワー系アスリートのストレングス・コンディショニングトレーニングにおいては多くのコーチにに受け入れられています。

 

◆その後の研究と今後の課題

 その後の追試でも脚筋力において同様の事が実験的に確認され(O’Bryant et al., 1988)、最近では、ピリオダイゼーションを用いたトレーニング群とピリオダイゼーションを用いないトレーニング群の総トレーニング量を16週間にわたって等しくコントロールした実験でもピリオダイゼーションの効果が確かめられています(Willoughby, 1993)。しかし、上半身のトレーニングでピリオダイゼーションの効果が確認されなかったり、(Stowers et al., 1983)トレーニング量だけでなく、強度も一定にコントロールしたところ、ピリオダイゼーションの効果が認められなかったことから、ピリオダイゼーション効果はトレーニング構造によるものではなく、量と強度が、比較するトレーニングに対してもともと高いために生じているにすぎないという説も提出されています(Baker et al., 1994)。

 プログラムに更に頻繁な変化を持たせる非線型モデル(Poliquin 1988)や ハーフメゾサイクル(Zatsiorsky, 1995)といった考え方も提出され実験的に検討されはじめています。専門書としては、Bompa(1993)やFleck& Kraemer(1996)のものがありますが、ピリオダイゼーションの科学的研究はやっと始まったばかりの段階でまだまだ検討の余地があると言えます。機会があれば、これらについて詳しく紹介したいと思っています。