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2018.05.30コラム
ピリオダイゼーション(2)

ピリオダイゼーション(2)

◆ ピリオダイゼーションのバリエーション


 ピリオダイゼーションとは、長期的なトレーニング期間全体にわたって常に同じプログラムを継続するのではなく、トレーンング期間全体をいくつかの短期的な時期に区切って、それぞれ独自の目的達成のためにプログラム変数を変化させ、それらを全体として作用させることによって、オーバートレーニングや単調さを防止するとともに最終目的をより効率的で確実に達成するための方法であることを前回説明した。 今回はこうしたピリオダイゼーションの具体的な構成法とそのバリエーションを紹介する。


◆ トレーニングの時間構造

 ピリオダイゼーションの時期区分は、基本的には1年間または半年間を最も大きなマクロサイクルと呼ぶ全体としてとらえ、それをメゾサイクルと呼ばれる通常4週間から8週間のいくつかの時期に区分する。そして各メゾサイクルはそれぞれ1週間のミクロサイクルと呼ばれる単位から成り立つことになる。ミクロサイクルを構成する1日がトレーニング日であり、1日に通常1回~3回のワークアウト(=セッション)を行う。

 年間に大きな大会が3つあるような競技種目によっては、マクロサイクルを1/3年としたり、後で述べるようにメゾサイクルを2週間程度の短期で区切ったり、週に2回の試合が組まれているような場合などはミクロサイクルを3日から4日にすることもある。

 こうして構造化された各時期のプログラム変数を最終目標実現に向けて変化させていくのである。


◆ 時期区分

 数週間から成り立つメゾサイクルをどのように区分するべきかが、そのピリオダイゼーションを最も大きく特徴づけることになる。筋力にかんして、一般的に行われている区分は次のとうりである。

(1)準備期→試合期→移行期

 これは、最も簡単な時期区分である。この場合、移行期にいわゆるオフシーズントレーニングとして基礎的・一般的なトレーングを行い、準備期に専門的トレーニングを増加させ、試合期には専門的トレーニング中心で進めるというものである。

(2)準備期→第1移行期(転換期)→試合期→第2移行期(積極的休養)

 準備期におこなった基礎的・一般的トレーニングの成果を土台として試合期に必要な専門的トレーニングを向上させる(転換させる)という考えかたである。この場合第2移行期は積極的休養として回復にあてられる。

(3)筋肥大期→基礎筋力期→最大筋力期→パワー期→維持期(またはピーキング)→アクティブレスト期

 上の準備期や第1移行期をさらに筋力にかんするトレーニング課題に沿って詳細に区分したものである。最初に形態的変化を起こさせるべく筋を肥大させることを目的とした時期を設定し、ついで神経系への刺激を強めて筋力の基礎を向上させ、この段階を土台としてさらに最大筋力を向上させ、ついでスピードの要素を加味したパワーの向上を目指す。そして試合期は、リーグ戦の行われるような長期シーズンスポーツでは維持期、単発の大会でクライマックを迎える競技ではピーキングを行い、そのあとは次のシーズンに向けて積極的休養を図るというものである。

 このピリオダイゼーションモデルでは筋力パワー期にはスクワットなどの特に高速で行うことを意識させないエクササイズとは別に、クリーンやスナッチなどのパワー系エクササイズを行うことを前提としている。したがって、こうしたパワー系エクササイズの強度を1RMに対する75~90%というスクワットなどのエクササイズよりは軽めに設定してフォームを崩さず最大パワーが発揮できる程度に設定しているのである。

 各期の間に移行期として1ミクロサイクル(1週間)程度のアクティブレストまたはきわめて低負荷の回復期を置く場合もある。

(4)解剖学的適応→筋肥大→筋力→転換期(パワーまたは筋持久力)→維持期(またはピーキング)→移行期

 筋肥大の前に解剖学的適応という時期を設定する考えかたである。関節や筋の柔軟性を高め、腱や靭帯などの結合組織を強化することを最初に行うというモデルであるが、各関節を使用するレジスタンス・トレーニング種目を最初に大きな負荷を使わずに可動範囲を広く取り、低速で数多く実施することにより柔軟性を高めることが可能となる。そのことがいきなり中・高強度を扱うことによる障害を防ぎ、より高強度のトレーニングの土台を作るためには効果的となる。転換期というのは高めた最大筋力をパワーや筋持久力に転換するという考えである。スピードや立ち上がりの要素を加味することでパワーを高めること、あるいは時間または反復回数を加味することで筋持久力を向上させる時期を設定するというのが特徴となっている。

(5)ノン・リニアー

 解剖学的適応、筋肥大、基礎筋力、最大筋力、筋力・パワー、筋持久力などの各時期をたんに一方向的に並べるのではなく、マクロサイクルのなかで何回も反復するという方法である。例えば解剖学的適応→筋肥大→基礎筋力→筋肥大→基礎筋力→最大筋力→パワー期→最大筋力→筋持久力→ピーキングというようにひとつの目的を持った時期を繰り返し適用する方法である。一方通行で各時期を並べる方法をリニアー・モデルというのに対して繰り返しを用いる方法をノン・リニアー・モデルという。


◆メゾサイクルの長さ:ロング・サイクル

 こうした各時期は通常数週間継続されるが、トレーニングの目的やレベルによってその長さは変化する。たとえば初心者では解剖学的適応に当てる時間を長く取る必要があり、上級者であればこの時期は1週間~2週間数回のセッションで十分であろう。また、筋肥大が目的である種目やポジションでは筋肥大期を長くあるいは何回も取る必要がある。

 筋肥大において成果を得るには、4週間や8週間程度では顕著な成果を得ることは難しい。したがって筋肥大期は12週間から16週間継続することが多い。

 最大筋力にしても高重量を継続して負荷していかなければ1RM を大きく増加させることは困難である。したがってこの場合も一定期間の高重量を負荷する時期を設定することになる。こうした方法はロング・サイクルと呼ばれ、各時期にじっくりとひとつの課題に集中して身体の適応を促すことになる。


◆ メゾサイクルの長さ:ショート・サイクルとハーフ・メゾサイクル

 しかし、最近、2種類の論拠からこうしたロング・サイクルとは異なるショート・サイクルと呼ばれる方法が用いられ始めている。

(1)ショート・サイクル

 筋肥大を最も刺激する12~8RM程度の強度や、筋力向上に最も頻繁に用いられる5-8RM程度のトレーニングを6-8週間程度継続するといわゆる速筋線維であるタイプⅡB線維が減少しタイプⅡA化するが、トレーニングを中断するとまたタイプⅡBに戻るという研究データがある。このことは、高強度レジスタンス・トレーニングによっても有酸素トレーニング実施のような「遅筋化」(タイプⅠへの移行はない)が進行することを意味する。したがって爆発的筋力やパワー発揮が重視される競技のコーチの中には、長期間の筋肥大や最大筋力トレーニングを嫌う場合もある。その場合はこうした時期を長期化させず2~4週間程度に抑え、その直後に軽量・高速のハイパワーを強調する時期を長めに設定し、これを反復するという方法が取られている。

(2)ハーフ・メゾサイクル

 筋肥大や最大筋力を冬から春先に実施し、本番のシーズンが秋という場合にパワー系のトレーニングを行っていても形態や最大筋力に陰りが感じられるということがある。また、筋力だけではなく、スピードや持久力など複数のコンディショニング要素のピーキングが必要である場合にひとつひとつの要素の集中して順番にトレーニングしていたのでは、長期的なマクロサイクルでは最初に行った要素が低下することがある。そこで、重要な要素については、低下するほどに完全に止めてしまうことをせず、メインとなる要素を強調しつつも他の要素を低いレベルでも維持できるように並行してトレーニングし通常よりも短期でそれを反復する方法である。

◆ 週内変動型モデル

 筋肥大、最大筋力、パワーあるいは爆発的筋力はそれぞれの目的に応じて最適な強度(1RMに対する割合またはRM)がある程度定まっている。したがって上記のモデルではそれらを長短の差や反復の有無はあるが、メゾサクルのレベルで一定期間継続して作用させるという方法を取る(図1の強度とレップ数を参照)。しかし、このモデルはミクロサイクルのレベルでこうした異なる強度を反復する。

 例えば月曜は10-12RM、水曜は6-8RM、そして金曜は2-4RMという具合である。これによって、リニアー方式で10-12RM→6-8RM→2-4RMという段階を踏むよりも最大筋力の向上率が大きいという研究報告や、大学ラグビー部がこの方式をシーズン中に取り入れることによってシーズン中にも筋肥大と1RMを向上させたという実践報告もある。

 ツアーを行うテニスやゴルフのプロフェッショナルあるいは大会続きでシーズンオフがほとんどない強豪チームなどでも、こうした週内変動モデルをほとんど年間通して行っている例もある。


◆ メゾサイクル内の強度と量の変動パターン

 週内変動型を除いて各メゾサクルにおいてはそれぞれの目的のもとに強度と量の適切な範囲が決まるが、数週間というメゾサイクルを通して常に同じ強度と量を継続していくことは適切ではない。週数回のワークアウトにおいて何週間も同じ強度と量の組み合わせのまま、例えば実際に使用する重量を徐々に高め、セット数を増やしていくことはオーバートレーニングに陥る可能性を高くする。また、心理的にも単調となりやる気が低下する危険性がある。 

 そこで、メゾサイクル内において強度と量を変動させる必要が生じる。強度を強・中・弱で、量を多・並・少で示すとともに、セット数/RM数で標準的な変動パターンを例示した。aは初心者の筋肥大期の例、bは上級者の最大筋力期の例である。前者では、セット数を段階的に上げ、強度を最終週で上げている。後者では強度を前半の2週間は8RM、続く2週間は6RMと上げる一方で、セット数は1週間ごとに4セットと3セットを繰り返し、変化を与えるとともに強度の上昇に対するスムースな適応を促進するように配慮されている。

 このように、メゾサイクル全体を通して基本的な狙いは一つであってもミクロサイクルレベルで強度と量を変化させることができる。週内変動型モデルを採用するとしても、オーバートレーニングを防ぎ、単調さを克服するためには各週ごとにそれぞれの目的とする範囲内で強度や量は変動させるべきであると考える。

◆ 日内変動パターン

 強度と量はミクロサイクル内においても変化させることが効果的であることがいくつかの研究や実践で確かめられている。

 例えば最大筋力向上を狙いとして週3日、基本的な強度と量のコンセプトを3セット×6RMでトレーニングを行う場合、それぞれの日と強・中・弱というように区別し、次のように変動させるのである。

(1)強の日・・・1セット目から6RMのウエイトをセットし各セットで最大回数挙げる。

(2)中の日・・・強の日に用いた6RMの95%をセットし各セットで最大回数挙げる。

(3)弱の日・・・強の日に用いた6RMの90%をセットし各セットで最大回数挙げる。

 また、次のような方法も可能である。これは4セット×10RMの例。各セット全て10RMで行うのではなく、セットごとに強度を変える。

(1)強の日・・・10RMの90%、95%、100%、100%

(2)中の日・・・10RMの85%、90%、95%、100%

(3)弱の日・・・4セットとも10RM可能な重さを用いる

◆ 変化させるべきプログラム変数

 ピリオダイゼーションで変化させるべきプログラム変数は、これまでの研究や文献では強度と量に限定されることが多かった。しかし、変化させるべきものはプログラム変数の全てであると言ってよい。種目選択、種目を実施する順序、休息時間、動作速度や具体的なエクササイズの実施の詳細、他のトレーニングとの関係などを各期の目的に応じて変化させるのである。




※このコラムは弊社代表 長谷川 裕が過去に雑誌で連載した内容を一部改訂したものです。