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2018.05.30コラム
第4章 質の高いスピード筋力トレーニングの方法論。

スピード筋力トレーニングガイド:質の高いスピード筋力トレーニングの方法論。

第4章 質の高いスピード筋力トレーニングの方法論。

 (1)フィットロダイン®のセッティング。

 フィットロダイン®のセンサーから出ているケブラー繊維でできたコードはどこにでも引っ掛けることができます。フリーウエイトではシャフトの先端のはずれにくい箇所にしっかりと固定してください。

 挙上の軌道に対してできるだけまっすぐ地面と垂直にコードが出ていく位置にセンサーを置くことが大切です。それにより正確なスピードが測定できます。

 センサーを置く位置が測定のたびにコロコロ変わるようだと正確な測定ができませんので注意が必要です。

 

 マシーンにフィットロダイン®のコードをセッティングする場合は、大きく分けて2つの方法があります。 

 1つは、最も大きく移動する部位(例えばチェストプレスマシーンなら、グリップ部、レッグプレスマシーンなら足をのせるプレート)にセットします。この場合、必ずしもセンサーを床の上に置く必要はありません。マシーンのフレームに固定したり台の上においてもかまいません。ただし、センサーからまっすぐコードが出ていくようにセンサーに一定の角度を持たせて固定して下さい。

 もう1つの方法は、移動する負荷に取り付ける方法です。ウエイトスタックのピンに取り付けるとか、プレートローディングのプレートを掛けるフックに取り付けます。センサーの設置にかんする注意事項は最初の方法と同じです。

 マシーンへのセッティングで気をつけなければならないことは、マシーンはカムやテコの作用により、設定したウエイトの重量そのものが負荷になるとは限らないという点です。

 ですからスピードは客観的に移動した距離÷時間で正確に測定されるとしても、同時に表示されるパワーの値は必ずしも妥当な数値にはならず、マシーンによって全て異なることになります。

 

 その他の設置法としては、身体に直接コードを付ける方法があります。腰の位置に設置することで足、膝、股関節による骨盤から下の伸展速度を測定し評価することができます。

 懸垂を行う際に床に置いたセンサーからコードを引き延ばして腰に付けることで、自分の体重を引き上げるための上肢のパワーが測定できます。

 

 ただ回数を追い求めるだけの懸垂ではなく、自分の身体を引き上げるスピードとパワーに意識を向けることにより、懸垂も上肢上体のスピード筋力やスピード筋力持久性を測定・評価し、効率良くトレーニングする優れたエクササイズになります。

 スイムトレーニングのチューブ引きで手にコードを取り付けることによりストロークごとのスピードと疲労度が容易にチェックできます。

 クロスカントリースキーのパスカング走法をシュミレーションしたマシーンがあります。そのポールのグリップ部にコードを取り付ければ肩と腕の伸展によるプッシュ動作のスピードや疲労度を測定したりトレーニングにおいてモニターすることができます。

 

2)フィードバックの準備と方法。

 フィットロダイン®を用いたスピード筋力トレーニングの利点はスピードとパワーそしてパーセンテージの即時フィードバックにあります。

 フィットロダインベーシック®を使う場合は液晶モニターに表示される数値を大きな声で即座に読み上げるコーチやパートナーの存在が大きな意味を持ちます。スピードの数値は小数点を含めてそのまま読み上げても早口言葉のようになり選手にもピンと来ませんから、単純に100倍して整数で読み上げるとよいでしょう。例えば1.27m/sなら127、0.96m/sなら96という具合です。

 パーセンテージのフィードバックはそのままの数字をフィードバックします。フィットロダインLED®を使う場合は三脚の上に設置されたモニターに赤色発光ダイオードで大きく表示されますから、選手が自分の目で見てフィードバック情報を得ることができます。

 また他の選手も同時に見ることができますので、トレーニングを行っている選手のパフォーマンスに即座に反応して激励の言葉や賞賛の声が発せられ、非常にモチベーションの高い活気あるトレーニングの雰囲気が作り出されます。



(3)記録用紙の準備。

 これだけ簡単にウエイトトレーニングにおける動作スピードとパワーとそれらのセットごとの最大値に対するパーセンテージがリアルタイムで表示されるとなると、これらの数値を記録として残しておくことにより様々な情報を得ることができるようになります。

 通常、ウエイトトレーニングのトレーニングログ(日誌)には、取り組んだエクササイズ種目、使用重量、回数、セット数、休息時間を記録しますが、これからは動作スピード、パワー、パーセンテージを記録として残し管理する時代です。

表2に、記録用紙の見本を示しました。実際はスピードだけを記録しておけば後はパソコン上の計算でパワーもパーセンテージも計算で出せますから、すぐにパワーやパーセンテージが見たい時以外は記録欄は1つで十分です。この例では12レップ×5セットまでです。



(4)トレーニング目標の設定。

 ここに記入されたスピードの情報から、それまでのトレーニングで到達した最高スピードを参考にしてその日に出したい最大スピードの目標値を決めることができます。トレーニングでの使用重量に変化がなくても挙上スピードが確実に上がってきていることは、それだけスピード筋力が大きくなってきていることを意味します。

 また、最高スピードを維持しつつ、最後まで80%以下に落ちないようにがんばろうというスピード筋力持久性の目標を設定することも非常に有効です。

 

(5)コンディショニングの把握。

 ここ最近のトレーニングで選手が出している最大スピードや平均スピードから見て今日はどうも遅いぞ、という日は明らかに疲労が蓄積している証拠です。低速での筋力発揮よりも、スピード筋力やRFDを決定づける神経系の働きは疲労の影響を受けやすいのです。あきらかにスピードの絶対値が低かったりパーセンテージの低下率が大きい日はオーバートレーニング状態か、何らかの理由で調子を崩していると判断することができます。

 いつもよりセット数を減らしたり、以後のセットで使用する重量を減らしたり、思いきってトレーニングを中止するという決断をするとよいでしょう。

(6)主観的努力感を補う。

 先に紹介した、コントラスト法やコンプレックス法やコンバインド法と呼ばれる、高重量エクササイズと軽量もしくは無負荷でのスピード筋力発揮を組み合わせる方法を採用する場合のフィットロダイン®の活用法を紹介しましょう。

 高重量でのハイパワー発揮によってポテンシエーション作用を引き出すためにはかなり集中した筋力発揮が必要となります。またその後に続けて行う軽量もしくは無負荷でのスピード筋力発揮で、文字どうり最大スピードが追求されなければRFDやスピードやパワーのトレーニング効果も不十分なものに終わってしまいます。

 決められた高重量が規定の回数上がるか上がらないかという誰の目から見ても明らかな基準があるのとは異なり、スピード筋力発揮は言ってみれば本人の主観的努力感でなんとでもごまかせてしまいます。コーチやトレーニング仲間はおろか本人でさえ本当に最大努力をしているかどうか怪しくなってしまいます。このような主観的努力感を補って100%のスピードを発揮できるように動作スピードをリアルタイムでモニターすることがトレーニング効果を高めるためには必要となります。

 また、スピード筋力トレーニングではスピードが低下した状態で無理に反復動作を繰り返すことはかえって有害となります。

 最大または最大に近いスピードでの繰り返しを、休息をはさんで十分回復させながら何回も反復することが必要です。選手を疲れさせてしまっては駄目なのです。主観的にまだ行ける、まだスピードは落ちてないと感じても実際にはスピードが低下してしまっていることは頻繁にあります。スピード変化をモニターすることでこうした問題も解決することができます。

 例えば最初の数レップで出した最大速度の90%以下に落ちたら、たとえ10レップやると決めていたセットの途中でもただちに止めさせて休息を入れます。そして、3~5分の休息で完全回復させてから次のセットで再び最大速度によるトレーニング動作を反復させるようにするのです。