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2018.05.30コラム
Velocity Zoneと%1RMの関係

VBTにおけるVelocity Zoneと%1RMの関係

【VBTにおけるVelocity Zoneと%1RMの関係】

 

〇本日はVelocity Based Training:VBTにおけるVelocity Zoneと%1RMの関係に関する投稿です。

 下記のグラフはS&Cスタッフ 齋藤と西山のベンチプレス1RM測定の結果です。20kgシャフトからスタートし、5kg刻みで徐々に負荷を増やしながら、もうそれ以上挙上出来なくなるまで行い、全レップGymAwareを用いて挙上速度を計測しました。常に最大速度が出るように挙上し、その際の1RM に対する%1RM毎の平均速度をプロットしました。





横軸は、個人ごとの1RM(齋藤:77.5㎏、西山90㎏)に対してそれぞれの重量に対応するパーセントを計算した数値です。縦軸が平均挙上速度(m/s)です。齋藤は20~40㎏までは3レップ、45~55kgまでは2レップ、60~77.5㎏は1レップを各1セットずつ実施しました。西山は20~45㎏までは3レップ、50~60kgまでは2レップ、65~90㎏は1レップを各1セットずつ実施しました。3レップと2レップではそれらの平均値で示しました。セット間の休息時間は120~180秒としました。 スペインのGonzalez-BadilloとSanchez-Medinaが2010年に発表した研究によれば、たとえ1RM値それ自体がトレーニングの成果やその日の調子によって変化しても1RMを100%とした%1RMのそれぞれの重量に対応した平均挙上速度は一定であることがわかっています。ですので、ある重量で発揮できる平均挙上速度を知りさえすれば、その重量がその日の1RMの何%に相当するかを直ちに推測することができることになります。

力−速度の関係では、基本的には負荷が増せば挙上速度が一律に低下することが明らかにされており、この例でも直線的に右肩下がりになっています。

 以上の%1RMと挙上速度の対応関係に基づいて、トレーニング目的に対応した%1RMに関するこれまでの研究結果を総合すると、最大筋力、筋肥大、筋力パワー、スピードパワー、スピードというそれぞれのトレーニング目的に対応するVelocity Zone、すなわちトレーニングの目的を達成するために守るべき平均挙上速度のゾーンは以下のようにまとめることができます。

▼目的・1RMの%重量・拳上速度の関係

・最大筋力   80%~100%    ~0.5m/s

・筋肥大    60%~80%   0.5~0.8m/s

・筋力パワー   50~70%   0.65~1.0m/s

・スピードパワー 30~50% 1.0m/s~1.25m/s

・スピード    30%<       1.25m/s~

 

 選手の日々のコンディションは様々な要因で変化します。ですから、同じ重量でも拳上できる回数は日によって上下します。しかし、その日の1RMに対する%1RM 毎に発揮するができる平均挙上速度はほとんど一定となります。このため、日々変動する1RMそしてそれに対応して変化する%1RMをいちいち知らなくても、上記のVelocity Zoneに合わせてトレーニングすることでその日に合った強度でトレーニングを行えるようになるのです。

 また、平均挙上速度をリアルタイムでモニタリングすることで、セット中の、特に後半に見られる挙上速度の低下を防ぎ、ターゲットとすべきモーターユニットの動員を促進するとともに選手のモチベーションアップにも繋がります。リアルタイムでスピードを意識しながらトレーニングをすることで、自分のペースで実施したトレーニングよりも、最大筋力やパワー発揮の向上率が有意に高まったという研究結果も散見されます。さらに、試合期におけるウエイトトレーニングで過度な追い込みを防ぐためや、目的に合った強度設定にも利用することができます。

 このように挙上速度を基に負荷を設定したり、コンディションを把握したりするトレーニング方法はVelocity Based Training(VBT)と呼ばれ、近年、全世界的に普及してきている新しいトレーニングシステムです。発揮パワーや挙上重量をそのまま目標にするのではなく、速度というシンプルかつ理解しやすい指標を目標とすることで扱う重量の異なる選手間でも統一した意識でトレーニングを行うことができます。

 今までのトレーニングに新たな刺激を加えたいという方は是非参考にしてください。

参考文献:J. J. González-Badillo , L. Sánchez-Medina, Movement Velocity as a Measure of Loading Intensity in Resistance Training, Int J Sports Med 2010; 31:347– 352.