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2018.05.30コラム
レジスタンストレーニングの動作スピード



◆パフォーマンスに対するパワーの意味

 スポーツに必要とされるほとんどの動作ではスピードが重要です。ただ単に時間をかけて大きな力を発揮するだけではなく、高速で大きな力を発揮すること、つまり力×速度としての仕事率=パワーをできるだけ大きくすることがスポーツパフォーマンスをさらに向上させることにつながります。

 言い換えると、同じ重さであればより速く動かすこと、逆に同じスピードならばその速さでより重いものを動かせるようになることがパワーの向上であり、他の条件が一定であれば、そのことがスポーツパフォーマンスを高くすることにつながります。

 例えば、同じ重さのメディシンボールであれば、パワーが高まることにより、ボールをより速く移動させる、つまりより短時間により大きな加速度を与えることによってボールを離す瞬間の初速度を大きくできるので、より遠くに投げることが可能になります。これと同じことは他の投擲物を投げる、相手の身体を投げる、バットなどの道具をスウィングする、自分の身体を加速するといった事柄でも同様です。

 逆に、同じスピードで自分の体重を加速する場合を考えてみましょう。以前よりも重たくなった自分の身体を重くなる前と同じように加速できるということは、これもまたパワーが大きくなったことを意味します。この場合は移動スピードは以前と変わりません。しかし、パワーの増大と同時に、速度×体重の積としての運動量も増大するためラグビーやアメリカンフットボールのように相手をブロックしたり、サッカーでチャージしたりする際のあたりの強さに直接影響してきます。

 

◆パワー発揮に要する時間 

 スポーツ動作の多くは、動作に要する時間と可動範囲が極めて限定されています。広い可動範囲全体にわたって力を発揮するよりもある特定の関節角度で素早く大きな力を発揮することが求められます。したがって、単なる最大パワーを高めるだけではなく、できるだけ短時間でできるだけ大きなパワーに到達できるということも重要な課題となります。動作の初期に大きなパワーに到達できることは可動範囲全体のパワーを高めるためにも有効です。動作開始の初期に大きなパワーを発揮する能力は、筋力の立ち上がり率(RFD=Rate of Force Development)を高めることによって可能となります。

 

◆トレーニングスピードの重要性

 このようなパワーとRFDを向上させるためのレジスタンストレーニングにおいては、挙上重量だけではなく挙上動作のスピードが問題となってきます。

 高速でトレーニングした場合と低速でトレーニングした場合とでは、高速でトレーニングした場合のほうが高速での筋力発揮に優れていたという筋力トレーニングの速度特異性は良く知られています。ボディービルディングのトレーニングシステムにSuper slow(超低速)法という軽量負荷を数十秒かかけて極端にゆっくりと上げ下げする方法がありますが、使用負荷が小さしぎるためタイプⅡの大きなモーターユニットを動員することは難しく、しかもきわめて低速であるためパワーの向上は望めません。

 高重量を高速でトレーニングしているレスリング選手と同じ高重量を低速でトレーニングしているパワーリフターを比較すると、レスリング選手のほうがアイソメトリック条件においても大きなRFDを示したという報告があります。同様の結果は、高速で大きな力を発揮するトレーニングを行っているウエイトリフター群と、大きな力であっても低速でのトレーニングが中心であるボディビルダー+パワーリフター群との比較でも示されています。

 

◆プログラム変数としての動作スピード

 最大か最大に近い(95%)重量でトレーニングする場合はトレーニング速度は速くしようと思っても速くならず、必然的に最高速度となります。しかし、10RM程度の負荷ともなるとよほど意識しない限り、スピードは遅くなってしまいます。フリーウエイトですべてのレップスを最高速度で上げるよう指示し1レップごとに挙上速度を口頭でフィードバックした場合と、速度にかんしては何も指示しなかった場合を比較すると、筋線維組成やトレーニングレベルにも依存すると思いますが、後者は前者の6割程度のスピードしか出ていませんでした。また、いずれの場合も10レップ目の速度は1レップ目の5~7割程度まで低下しました。

▼GymAwareを用いてリアルタイムでパワー値をフィードバックしながらのトレーニング



 全トレーニング期間を通じて動作速度をモニターしていったところ、徹底的に速度を追求した選手では、3セットのトレーニングで使用する10RMの重量は上がっていきませんでしたが、速度は日を追うごとに速くなり、結果として顕著なパワーの増大が得られました。また、トレーニングで扱う重量は増えなかったにもかかわらず、マックス測定では向上が認められました。

 パワーやRFDの向上を意図したトレーニングにおいては、重量のみならず、トレーニング動作のスピードが重要であり、さらに、そのスピードをモニターすることによってトレーニングを管理していく必要性を示していると思われます。