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2018.05.30コラム
女性のトレーニング

女性のトレーニング

◆女性兵士と筋力

 「G・Iジェーン」をご存知でしょうか?G・Iジョーではありません。実はこれ、米国海軍の特殊部隊に入隊したオニールという女性が、他の男性兵士とまったく同じ激しい訓練に挑戦し、脱落者の続出する中で、精神力と身体能力の極限にまで追い込まれる凄まじいトレーニングに耐え抜き、ついには実戦において上官として活躍するという、現在上映中の映画のタイトルなのです。

ストレングストレーニングの研究で世界的に知られるウイリアム・クレーマー教授の主宰するペンシルバニア州立大学スポーツ医学研究室では、実際に米軍の委託を受け、主としてストレングストレーニングの観点から女性の身体的能力の可能性についての研究が現在進められています。

これまでの多くの研究結果を平均すると、測定方法や測定部位によってかなりのばらつきが見られますが、体重差を考慮しない絶対筋力において女性の筋力は全身で男性の63.5%、上肢だけで見ると55.8%、下肢だけでは71.9%とされています(Laubach、1976)。1991年のパワーリフティング学生世界記録を見ても53-kg級で男子の値がスクワット183kg、ベンチプレス115.9kg、デッドリフト192.8kgに対して女子の記録は142.8kg、72.6kg、156,8kgと全体的に低く、従来の研究結果の平均値と同様に上肢の筋力差が目立ちます(Kraemer & Koziris、1994)。

この男性と女性の筋力差が果たして生物学的に絶対的なものなのかどうか、体重の違いや体組成の違いを考慮するとこの値はどうなるのか、トレーニング効果には差があるのかないのか、そして大きな筋力や身体的能力が必要とされる職種や任務において女性の活躍はどの程度期待できるのか、さらには、トレーニング計画や安全面での特別な考慮は何かといった問題がまさに軍の関心事となっているわけです。

 

 ◆ 違いは上半身の筋量の差

 絶対筋力において女性は男性よりも低い値を示しますが、相対筋力、特に除脂肪体重で比較するとレッグプレス、レッグエクステンション、レッグフレクションといった下肢の種目では差がなく、女性の値のほうが男性を上回ることもあるということがこれまでの研究結果からわかっています。

 さらに筋の断面積で比較すると上肢の筋力差も見られなくなり、「筋出力は筋の断面積に比例する」という多くの研究報告(Ikai & Fukunaga、1970など)と一致してきます。

 また筋線維タイプの割合に差があるという証拠も認められていません。つまり、筋自体の発揮する力には差がないが、身体全体として実施する種目の値を比較すると、男性と女性の体型の違いから女性では上半身の筋量が下半身の筋量に比べて相対的に少ないため、絶対筋力においても、また全身の体重に対する割合である相対筋力においても、上肢の筋力値だけが男性に比べて低い値になるという結果を示すものと思われます。

   この委託研究の測定項目の一つであるAPFT(Army physical fitness test)の基準値においても、例えば2分間のシットアップでは22歳~26歳の男子で87回できれば100点となるのに対し、女子では85回とほとんど男女差が考慮されていないのに比べて、プッシュアップにおいては男子では80回で100点となるのに対し女子では56回とかなり低く設定されています。

  したがって、女性のストレングストレーニングのプログラムデザインにおいては上半身の種目に一工夫加える必要があると言えるでしょう。スクワットやクリーンなどにおいても下半身より上半身の筋力が挙上重量のネックとなる可能性があります。

筋力そのものよりもさまざまな身体活動のパフォーマンスを規定すると考えられるパワー出力に関しては、除脂肪体重で比較しても女性のほうが小さいとする報告があり、この理由としては女性においては筋力増加率(Rate of force development :RFD)が男性に比べて小さいため、同じ筋力を発揮するまでの時間が遅くなるためと考えられています(Komi & Karlsson 1978)。しかし、その理由についてはよく分かっていません。