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2018.05.30コラム
トレーニングのレストピリオド(休憩時間)

トレーニングのレストピリオド(休憩時間)

◆トレーニング変数としてのレストピリオド

 ストレングストレーニングのプログラムデザインを行う上で見過ごされがちなものに、トレーニングセッション中のレストピリオドの長さをどう設定するかという問題があります。

 休息時間はできるだけ短時間のほうが気合が入って効果があがるのではないかとか、決められたセットを早く終わらせたいといったことからレストピリオドを短くし、結果的にいつまでも強度が低いままであったり、逆にその時の気分で適当に次のセットのやる気が起きるまでだらだらと休息してしまったりというのでは、それぞれの目的に合ったトレーニング効果を引き出すことはできません。同じエクササイズでも、レストピリオドの長さによって生理的機能は異なる反応を示し、それによるトレーニング効果は明らかに違ってくるのです。

 したがって、レストピリオドはひとつの重要なトレーニング変数としてしっかりとコントロールされる必要があります。

 

 ◆最大筋力&パワーとレストピリオド

 通常、最大に近い負荷( >6RM ) を用いた最大筋力の向上やパワーの向上を目的としたトレーニングのセット間およびエクササイズ間のレストピリオドは、3分~5分が広く用いられています。その理由として、高強度エクササイズで用いられるATP‐PC系のエネルギー源が回復するには、およそ2.5分~5分を要することがあげられます(Tesch & Larson, 1982 : Stone & O’Bryant,1987)。それよりも短時間で新たなセットを連続させると、十分な力の発揮がなされないままそのエクササイズを終了してしまうことが考えられます。

 33名の男子学生による週4回のエクササイズを10RM×5セットで5週間続けた結果、スクワット筋力の向上率が、レストピリオド3分群では7.2%、2分群は5.8%、そして30秒群は2.4%であり、3分群と30秒群には有意差が認められました。このトレーニング期間中の毎回のスクワットエクササイズで実際に被験者によって用いられた1RMに対する相対強度をトレーニング日誌に基づいて調べたところ、レストピリオド3分群は30秒群よりも明らかに高い強度のものを用いていたことが確認されました(Robinson et al., 1995)。この結果は、RM法によって強度設定し、全セットを決められたレップ数で遂行できれば強度を上げるという方法を取る場合、レストピリオドが短いと強度が上がっていかず効果が現われにくくなることを示しています。

 トレーニングとは異なり、ベンチプレスの1RM測定に関してはレストピリオドが1分間で十分であることが示されており(Weir et al., 1994)、測定やコンテストの条件はトレーニングと異なることにも注意すべきです。

 また、8種目からなる10RMで1分レストのエクササイズと5RMで3分レストのエクササイズを比較すると、強度では後者のほうが大きいにもかかわらず、レストピリオドの短い前者のほうが、2倍の血中乳酸濃度(男子でエクササイズ直後に約10mmol/L)を生じさせました(Kraemer et al., 1993)。レスリングや400mあるいは800mのスプリンターなど高血中乳酸濃度のもとでの筋力発揮を必要とする選手以外では、このようなエクササイズは選手に不必要なストレスをかけ、合目的的なトレーニング効果を引き出すことができないと思われます。

 ただし、低強度であれば乳酸の蓄積は低レベルに止まりますから、リハビリテーションや長期休養直後のトレーニングにおいて筋力と有酸素性の全身持久力を一定程度同時に高めるサーキット形式のストレングストレーニングでは、15秒~30秒という短いレストピリオドも可能となります。

 

◆筋肥大とレストピリオド

 いっぽう、筋肥大や局所的筋持久力を目的としたトレーニングでは30秒~60秒が一般的です。 筋肥大を引き起こすのに不可欠なタンパク同化作用のある成長ホルモンレベルは、10RM×3セットのエクササイズにおいて、セット間レストピリオドが1分のほうが3分よりも著しく高くなります(Kraemer et al., 1990)。同じタンパク同化ホルモンであるテストステロンのレベルは男性の場合、10RMで1分レストのエクササイズによっても5RMの3分レストによっても同じように高くなりますが、女性ではトレーニングよる変化は認められません(Kraemer et al., 1991)。これらのことから、レストピリオドを必要以上に長く取ることは筋肥大の目的にはそぐわないと考えるべきでしょう。

 

◆セット「間」レストピリオドとセット「内」レストピリオド

 以上のようにレストピリオドとは、通常セットとセットの間、もしくは個々のエクササイズの間の休息時間を指しますが、爆発的筋力の向上を目的として中・高強度エクササイズを実施する際、1レップスごとの挙上スピード、すなわち1動作ごとの発揮パワーの低下を防止するためにセット内レストピリオドという考え方が問題にされています(Tidow, 1995: Deledluse, 1997: Poliquin, 1998)。次回はこれについて考えてみましょう。