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2018.05.30コラム
ピリオダイゼーション-強度と量とは何か?-

ピリオダイゼーション -強度と量とは何か?-

【ピリオダイゼーション -強度と量とは何か?-】

 

◆神経系と筋肥大

 筋力の向上をもたらす要因には、神経系の機能的な改善によるものと筋の肥大という形態的変化によるものがあることはすでに多くの研究から明らかにされています。最大筋力や爆発的筋力の向上、除脂肪体重の増加といった個々のトレーニング課題の達成に対して、この二つの要因はトレーニングで用いる負荷の大きさや種類によって相対的に異なる貢献をすることになります。 プログラムデザインとは、トレーニングの目的に応じて、この二大要因をどのようにコントロールしていくか、その方法を計画することであると言うことができます。レジスタンストレーニングのピリオダイゼーションにおけるトレーニングの「量」と「強度」の意図的な変動とは、まさにこの課題に答えようとするものです。

 今月と来月の2回にわたって、トレーニングの量と強度をどのように規定し、計算するのか、そしてそれをどのように変化させるか、そのバリエーションにはどのようなものがあるのかについて考えてみましょう。(ピリオダイゼーションとは何かについては本誌1998年9月号参照)

 

◆量と強度の計算方法

 ピリオダイゼーションにおける量と強度を正確に数値化して管理していくためにはその計算方法を厳密にする必要があります。近年アメリカにおけるピリオダイゼーションの理論をリードしてきた文献(Stone & O’bryant,1987)によると、トレーニング量とは、総仕事量(=力×距離)であると規定されていますが、実際の計算となるとウエイトを移動させる距離は、トレーニング期間中に、成長による変化のない成人の場合、ほぼ同じとみなして、「ウエイトの重さ×反復回数」とすることが多いようです。例えば、スクワットを100kgで10回3セット行なったとすると、100×10×3=3000kgとなります。ところが、この方法によると、100kgで10回挙げるのと、200kgで5回挙げるのとが同じ量(1000kg)ということになり、そのトレーニングの効果はまったく異なったものとなります。そこで、量のカテゴリーから強度に関係する使用重量は除外して、総レップ数に限定るべきであるとする意見もあります(Baker et al., 1994)。

 強度は、また、トレーニングにおける平均パワー出力であるとも説明されてきました。この場合のパワー出力は、あるエクササイズを行なった時の仕事量すなわち、「用いた重量×持ち上げた距離×レップ数÷そのセットに要した時間」で計算されます(Stone & O’bryant,1987)。

 ここでも、成人の場合移動距離は無視することができます。したがって、例えば、100kgのスクワット×10レップスに30秒を要した場合は、約33、150kgのスクワット×3レップスを10秒で行なった場合45となり、後者のほうが強度は大きいと計算されるわけです。通常、扱う重量が高くなれば、レップ数は自然に減少し、その結果、1セットに要する時間も短くなります。したがって、強度は、トレーニングで実際に使用した重量そのものになります。一つの種目についてセット毎に重量を上げていくピラミッド形式の場合、その種目の強度は平均をとります。同様に、その日の平均、週平均、月平均を計算することが出来ます。

 

◆相対的強度と絶対的強度

 強度を設定したり、分析する場合に注意するべきことがあります。その一つは、大まかな強度は上述の方法で推定することが可能ですが、実際のエクササイズ動作において発揮されるパワーは最大アイソメトリック筋力のほぼ30%(Kaneko et al.,1983)、フリーウエイトによるマックス(1RM)のほぼ60から80%程度の重量を高速で挙上する際に得られる(長谷川、未発表資料)という事実です。トレーニングの強度をパワー出力として計算していく場合、実際のエクササイズにおけるパワー出力は単に使用したウエイトの重量だけからは判断できないことになります。トレーニングの目的がパワーの向上にあり、実際のトレーニングにおいて挙上速度を強調していく場合、絶対的強度としての平均使用重量とは別に、1RMに対する相対的強度(%)を計算して、強度の設定や分析を行なう必要があるのです(Stone et al.,1999)。

 また、相対的強度を用いることによって、トレーニングの進行につれて使用重量が上がっていく場合に絶対的強度だけではトレーニングの強度が正確に把握できないと言う問題を解決することができます。

 さらに、注意するべきことは、相対的強度を1RMに対する%としてのみとらえ、すべての種目にそれを適用することには無理があるということです。たとえば、1RMの80%を用いた際にベンチプレスなら10回できる人がレッグプレスだと15回、アームカールでは7回と言うように、1RMのパーセンテージだけでは正確に強度を査定できないのです。そこで、異なる身体部位の複数種目からなるトレーニング全体の強度を把握する場合には、RM(最大反復回数)値の平均を強度に取る必要があります。

 

◆目的に応じた正確な記録の必要性

 このようにピリオダイゼーションにおいて量と強度という要素を扱っていく際、目的に応じた厳密な規定と計算が必要となります。アバウトなトレーニング計画や、やりっぱなしのトレーニングではなく、きちんと計画をたて、記録を残していくことが科学的トレーニングの初歩的な第一歩であるということを再確認したいものです。