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2018.05.30コラム
エクササイズ種目の選択(2)

エクササイズ種目の選択(2)

前回説明したエクササイズ種目を選択していく際の基本的視点に立脚して、目的と条件に応じた適切な種目を選択するいくつかの方法を説明しよう。


◆エクササイズ種目選択ののガイドライン

 最初に、種目を選択するための一般的なガイドラインをいくつか提示する。

 (1)1つの部位に対して1つのエクササイズ。これは身体全体を肩、腕、胸、背、脚、腹の6つの部位に分けたり、あるいは腕をバイセプスとトライセプスに分け、脚を臀部を含めた脚全体と大腿前部と後部に分け、下腿部を独立させて10の部位に分けて各部位に1つずつの種目を当てるという方法である。

 (2)1つの筋群に対して1つのエクササイズ。部位というよりも筋群としてもう少し細かく分類し、三角筋、僧帽筋、大胸筋、広背筋と菱形筋、脊柱起立筋、大腿四頭筋、大臀筋、ハムストリングス、下腿三頭筋、上腕二頭筋、上腕三頭筋、股関節内転筋群、股関節外転筋群、腹筋群という14種の各筋群に対して1つの種目を選択する方法である。これでは種目が多すぎる場合、(1)と(2)の中間を取る方法も可能である。

 (3)1つの部位または筋群に対して1つのコアエクササイズ+1つか2つの補助エクササイズ。

 (4)各部位に対して2つか3つのエクササイズ。

 (5)スポーツ活動の主動筋+その拮抗筋。

 (6)構造的、グランドベース、クローズド・キネティックエクササイズをコアエクササイズとして数種目選び、補助エクササイズとして各部位の小筋群のエクササイズを1つまたは2つ選ぶ。

 (7)スポーツ活動の障害部位を中心に選ぶ。

 (8)体幹部のエクササイズを集中的に選択する。


◆目標・条件による具体例

 以上のガイドラインに基づいて目標や条件に応じた具体例をあげてみよう。

(1)初心者のための筋肥大プログラム

 筋肥大期には、筋肥大のために最も効果的な刺激が加えられるようにする必要がある。そのため1つの部位または1つの筋群に対して最低1種類の種目を選択する必要がある。特に発達させたい部位がある場合はその部位に対する種目を増やす。エクササイズの配列について解説する際に詳しく述べるが、コンパウンドセット法と呼ばれるひとつの筋群に対する多様な種目を連続して与える方法を採用することも有効である。ポピュラーな種目の中から選択した例としては以下のようなものがある。

 肩:ショルダー・プレス、腕:アーム・カール(バイセプス・カール)とトレイセプス・エクステンション、背中:ベント・オーバー・ロウまたはラット・プルダウンまたはシーティッド・ロウ、胸:ベンチ・プレス、脚と臀部:バック・スクワット、下腿:カーフ・レイズ、腹:クランチ。このうちショルダー・プレス、ベンチ・プレス、バック・スクワットがコア種目となる。

(2)中級者のための筋肥大

 上級者ともなると筋肥大のためにはさらに複数の種目をひとつの部位や筋群に対して選択していく必要が出てくる。したがって全体としての種目数が多くなるので、ワークアウトを上半身と下半身あるいは部位によって曜日を分けて実施することになる。例としては以下のものを上げることができる。月曜と水曜が上半身、火曜と木曜が下半身である。

 上半身の日は、胸のベンチ・プレスにプラスしてダンベル・フライを入れる。背中の種目をラット・プルダウンにプラスしてシーティッド・ロウを入れる。肩のショルダー・プレスにプラスして僧帽筋も含めたアップライト・ロウを入れる。上腕二頭筋のバイセプス・カールにプラスしてハンマー・カールを入れる。上腕三頭筋のトライセプス・エクステンションにプラスしてトライセプス・プッシュダウンを入れる。そして腹部のクランチを行う。

 下半身の日は、脚と臀部のスクワットにプラスしてフォワード・ランジとヒップ・スレッドを入れる。レッグ・カール、レッグ・エクステンション、シーティッド・カーフレイズに加えてスタンディング・カーフレズを入れる。そして下半身の日の腹部の種目はクランチではなくハンギング・レグレイズとする。

(3)上級者のための筋肥大

 さらに経験を積んだ上級者で週に5回あるいは6回のトレーニングが可能な、またはダブル・スプリットによる一日午前・午後の2回ワークアウトが組める場合には各部位に対する種目をさらに増やすことやセット数を増やすことが可能となる。胸のワークアウト例をあげると、ベンチプレスとインクラインプレスという2つのコア種目を4セットにプラスしてダンベル・フライとペクデック(バタフライ)という補助種目を3セット行うというようになる。このように1箇所か2箇所に集中するワークアウトを例えば、胸、肩+上腕三頭筋、大腿四頭筋、ハムストリングス、下腿、背中+上腕二頭筋、という6つのワーアウトに分けて4から6の種目を選択することが上級者の筋肥大では可能となる。

(4)最大筋力

 競技種目のバイオメカニクスから見た特異性を加味しつつ、最大筋力を高める目的で行われるワークアウトでは、スポーツ活動の姿勢や主動筋に対する関節角度に注意した選択が重要となる。また、拮抗筋に対する配慮を忘れないようにして筋バランスを崩さないようにすることも必要となる。種目・ポジションに対して特異的な専門的筋力のための種目選択法をサッカーのゴールキーパーを例として取り上げてみよう。条件として週3回、1時間以内で終わらせる必要があるとする。基礎的な筋力や筋肥大はすでに獲得されており、柔軟性や障害暦について特に問題がないとすると、以下のようなものが考えられる。

 パワー・クリーンとプッシュ・プレス。この2種目がコア種目の構造的種目である。次にハーフ・スクワットとインクライン・ベンチ・プレスとベント・オーバー・ロウ。この3種目は下半身と上半身の多関節種目である。以上5種目がコア種目であり基本的な最大筋力の発達を特異性を加味して行う種目である。補助種目として、深く股関節を屈曲した片脚での筋力を強化するためにほぼフルレンジで行うサイド・ランジ、障害予防のためのローテーター・カフ種目、体幹部の種目としてローマンチェアで行うロシアン・ツイストとツイスティング・ハイパー・エクステンションを含める。


◆種目の多様性と厳選

 以上の例の他に、爆発的筋力を集中的にトレーニングするための種目選択や、インシーズンに最大筋力とパワーを維持するためのプログラム、リハビリテーションを目的とした種目選択、オフシーズンの移行期のためのシーズン中に酷使した筋群をリフレッシュするための種目選択など、様々な種目の様々な目的と条件に応じて種目を工夫することが必要である。

 基本的には、前回と今回にわたって説明した視点から総合的に判断してプログラムの目標にふさわしい種目を選択していくことができるが、今後検討するエクササイズの配列順序や強度や量などのプログラム変数によっても、どの種目を選ぶかという最終判断は変化する。詳しいことはそれらの変数の説明をすべて終えてからあらためて解説することにするが、選手やクライアントが満足するだけの数と種類の変化に富みつつ、飽きたり長時間にならないように厳選した少数の種目に絞られたプログラムを組むことは思うほど容易い事ではない。自己満足にならないよう常に選手の立場に立ってトレーニング状態をモニターする姿勢を持ち続ける必要がある。