第8章スポーツ特性や動作課題によって異なるスピード筋力のトレーニング課題。 | S&Cスポーツ科学計測テクノロジー スポーツパフォーマンス分析

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2018.05.30コラム
第8章スポーツ特性や動作課題によって異なるスピード筋力のトレーニング課題。

スピード筋力トレーニングガイド:スポーツ特性や動作課題によって異なるスピード筋力のトレーニング課題。

第8章 スポーツ特性や動作課題によって異なるスピード筋力のトレーニング課題。

 確かに、高重量の外部抵抗、例えば柔道やレスリングなどで抵抗する相手の身体を移動させて投げるためには力が大きい方が有利です。なぜなら”F=ma”というニュートン力学の大法則により、より重いものをより大きく加速するためにはより大きな力が必要だからです。

 しかし一瞬体勢が崩れて動き始めた相手の身体を、その一瞬を逃さずに投げるには何が必要でしょうか。時間をかけて発揮できる最大筋力がいくら大きくても間に合いません。ここで役に立つのは、まさにRFDとスピード筋力です。

 バックスウィングしたバットを前方に振り始めるバッティング動作の初期には、動作方向がエクセントリックからコンセントリックに切り替わるため瞬間的にアイソメトリック筋活動となります。この時、速度はマイナスからプラスに切り替わりますから瞬間的にゼロになります。切り替った直後はスピードも遅く、そのため非常に大きな筋力が必要です。しかしボールを捉える直前までバットを加速させバットを振り切るスピードを最大にするにはやはりスピード筋力が不可欠です。

 速度ゼロからスターティングブロックを蹴って身体を一瞬にして跳び出させ、爆発的に加速させるには極めて大きなRFDが必要です。中間疾走の局面においてトップスピードで回転している脚の周期的な運動を維持するためには高速でのスピード筋力が要求されてきます。

 1RMスクワットの値を体重で割った値とスプリントスピードの間には余り大きな相関関係はありません。しかし1RMの50~80%の重量を用いた時に得られるスクワットジャンプの最大パワー値とスプリントスピードとの間には強い関係が見られます。さらに、1RMの20~30%(1RMが150kgなら25~45kg)という軽量バーベルに対して発揮されるパワーとスプリントスピードとの間にはさらに強い相関が得られるのです。特にスタート直後の加速部分よりも高速走行に入ってからの中間疾走のスピードと軽量バーベルに対するパワーとの相関が強くなります。

 7~10kg程度の重いメディシンボールを椅子に座ってチェストパスの要領で遠くまで投げる能力とベンチプレスの1RMとの間にはある程度の相関がありますが、1RMの50~80%負荷に対して得られる最大パワーとメディシンボールの投射距離との間にはもっと強い相関が得られます。

 

 しかし、1~2kgといった軽いメディシンボールを同じ方法で遠くまで投げる能力とベンチプレスの1RMや最大パワーとの相関は低くなり、むしろ20~40kgという軽量バーベルに対して発揮されるパワーとの相関が強くなります。

 物を投げる運動や身体を高く遠くへ跳躍するという運動のスピード特性は、動作の開始から投擲物のリリースやジャンプの踏切の瞬間までずっと加速が継続するという点です。決して動作の途中で減速することはありません。このような加速特性を持つ動作を行う時の筋活動を「バリスティック」(弾道的)と表現します。

 動作の最初にだけ力が必要で後はいらないというわけではありません。初期の加速により高速化した運動をさらに高速へと加速し続けるのです。ですから動作後半には特に高速での筋力発揮が必要となります。この特性をウエイトトレーニングで完全に模倣するには実際にウエイトを投げるか身体を投射する、すなわちジャンプするしかありません。                                                                                                    

 このように、スポーツパフォーマンスはそのスポーツの特性や動作課題によって様々に異なる要求をしてくるのです。最大筋力や1RMさえ高めればよいという単純な発想ではこのような複雑な要求に答え切れるはずがありません。まして、スローなほうが効果的だとか、動作の初期にだけ大きな力が必要で後はいらないとかいう考えは間違いです。

 スピードが命のスポーツ動作に役立つRFDやスピード筋力やパワーといった爆発的筋力を向上させるためには、時間とスピードという要因を常に念頭においてトレーニングを行うことが求められてくるのです。