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2018.05.30コラム
第1章 研究室ではなくウエイトルームでスピードとパワーを測ろう。

スピード筋力トレーニングガイド:研究室ではなくウエイトルームでスピードとパワーを測ろう
第1章 研究室ではなくウエイトルームでスピードとパワーを測ろう。

筋力発揮のパワーやスピードの測定というと、大学や専門学校で習ったアイソキネティック(等速性)筋力測定を思い出す人が多いかもしれません。

 サイベックスやバイオデックスといった等速性筋力測定マシーンが日本中の大学や病院や研究機関やトレーニングセンターに競って導入されました。最大筋パワーの測定や低速筋力と高速筋力の比較などというと今でも必ずといっていいほどこれらのマシーンが使用されています。選手は宇宙飛行士の訓練台のような椅子にベルトで固定されて膝や腕の曲げ伸ばしを行ってきました。これらの高価な機械を使って多くのスポーツ選手の等速性筋力(一つの関節の回転力なのでトルクという)やパワーが測定され、数多くの論文が書かれ学会発表が行われてきました。

 

 しかし、残念ながらこうした筋力・パワーの測定がスポーツパフォーマンスを向上させるためのトレーニングを行っていくために本当に役に立っているとはいえません。その理由をまとめると次のようになります。

 

 第1に、一般のスポーツ選手やコーチにとってこうした特殊装置を利用できるチャンスが余りにも限られているからです。普段のトレーニング環境からのアクセスも不便な上、そこまで行ったら行ったで順番がくるまで何時間も待たされるようではそれだけで疲れてしまいやる気もなくなります。

 

 第2に、こうした測定で得られるデータのほとんどが単関節運動の筋力やパワーだということです。スポーツ動作は全て全身の多くの関節が連動して力を発揮する多関節動作です。ところがアイソキネティックマシーンのほとんどは膝なら膝といった単関節でしか測ることができません。これでは実際にスポーツに必要な全身のパワーを知ることはできません。

 

第3に、脚の多関節動作を測定するオプションがついている機械でも腰掛けて行うレッグプレス型の動作となり、エリエール社のCESマルチファンクション®を除いて、足裏を地面につけて立位で発揮する「クローズドキネティック」の筋力やパワーを測定することができません。

 

 第4に、機械的に設定可能な速度が限られています。ほとんどのマシンで実際のスポーツの動作で起っているような速い速度を再現することができません。

 

 第5に、動作範囲の中で加速や減速が生じるという自然な動作速度の変化を再現することが困難で、実際のスポーツ動作とはかなり異なる動作を強いられることになります。

 

 そして第6に、こうした測定ができる施設の多くは、結果が出てくるのに時間がかかり、やっと出てきたかと思っても難解な単位の複雑な数字やグラフが並び、それぞれにどういう意味があって何をどうトレーニングしていけばいいかピンと来ません。このようなアイソキネティック筋力測定は、どうしても測りたい項目があり、その装置でなければ測定できない場合を除いてスポーツパフォーマンス向上を目指した実際のトレーニングとは余りにも距離があり過ぎます。