第3章 フィットロダイン®によるスピード筋力測定と評価の実際。 | S&Cスポーツ科学計測テクノロジー スポーツパフォーマンス分析

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2018.05.30コラム
第3章 フィットロダイン®によるスピード筋力測定と評価の実際。

スピード筋力ガイドブック:フィットロダイン®によるスピード筋力測定と評価の実際

第3章 フィットロダイン®によるスピード筋力測定と評価の実際。

フィットロダインベーシック®とフィットロダインLED®による標準的なスピードとパワーの測定方法を説明しましょう。

 

(1)最大パワーの測定(フリーウエイト)と評価。

 ●適切なウォーミングアップのあと、まず20kgのシャフトだけ、力の弱い選手なら10kgシャフトだけを用いて3回の連続的な最大速度での挙上を行います。フィットロダイン®の重量の入力部に20または10とインプットしてから試行を開始します。

 スクワットなら、ボトムポジションで一旦静止してから一気に上昇させるコンセントリックオンリーのスクワットジャンプが適切です。切り返しを入れると重量が重くなった場合、経験の乏しい選手では若干危険が伴う可能性があります。また、素早い切り返しを伴うと、伸張反射や弾性エネルギーの蓄積と再利用というストレッチ-ショートニング・サイクル筋活動の特徴が増長され、コンセントリックオンリーの筋活動とは出力が変わってしまいますので、最初から安全な方に統一しておいた方がいいのです。

 ベンチプレスも速く上げようとするあまり胸の上でバウンドさせがちですから、シャフトが胸に触れる前に必ず減速してゆっくり下降させてから上方に突き上げるように加速させて下さい。1回ごとにスピードまたはパワーの絶対値を選手に口頭でフィードバックします。それによって選手は最大スピードを意識することができ、スピード速くするための効率のよい動作コントロールがやりやすくなります。

 3回のスピードとパワーの最大値をメモリー機能を用いて確認し、記録用紙に記録します。最大スピードが出た時にパワーも最大値が記録されているはずです。

 ●2分程度の休息をはさみ、次にウエイトを10kgまたは20kg増加させます。上級者のスクワットでは20kg増量でいいでしょう。まだ高重量が扱えない選手のベンチプレスでは10kgもしくは5kgの増量を行います。設定した重量をフィットロダインにインプットしてさきほどと同じ要領で最大速度を意識して3回挙上し、最大値を記録します。

 ●この様にして次々とウエイトの重量を上げながらスピードとパワーの最大値を記録していきます。高重量になってきたら必ずしも3回試行する必要はありません。2回もしくは1回でもかまいません。また試行間に5秒~10秒程度のレップ間(セット内)レストピリオドを入れてもいいでしょう。

●表1に記録表の例を示しました。この表は100kgまで重量を上げて記録しています。 最大パワーを測定することだけが目的なら、このように1RMまで速度を測りつづける必要はありません。

70kgでパワーが低下した時点で測定を終了することができます。念のため80kgまで上げてパワーがさらに低下していることが確認されたら、測定はそこで終了です。選手に無駄な疲労を強いる必要はありません。



● 記録をもとにして図3のようなグラフを描きましょう。横軸は使用した重量です。縦軸の左側にスピード、右側にパワーを取り、それぞれの値をプロットします。

 ここではひとつのグラフに2つのカーブを同時に描いていますが、別々にどちらか好きな方だけを使ってもいいでしょう。エクセル等にテンプレートを作成しておけばいつでもこのようなスピードとパワーの曲線を描かせ、スピード筋力のトレーニング状態を確認したり課題を発見することができます。

(2)軽量抵抗に対するスピードとパワーの測定。

 最大パワーの測定では軽い重量から重い重量へと進んでいきましたが、逆に重い重量から徐々に軽くしていくという方法もあります。

 この方法は、軽量の抵抗を持ち上げるスピードやパワーを知りたい時に使うと効果的です。アップの後、1RMあるいはほぼ1RMに近い重量から開始し、徐々にウエイトを軽くしていきます。

 高重量に対して高速でリフティングしようと努力した結果、神経-筋の伝達効率が良くなり、抑制が取れて中枢神経系の興奮水準も高まります。そして閾値の高いタイプIIモーターユニットも動員されやすくなっています。このような神経系の状態を「ポテンシエーション」といいます。

この状態で軽いウエイトをできるだけ高速で持ち上げるようにすると最初から軽いウエイトで行うよりも速いスピードが記録されパワー値も大きくなります。スクワットジャンプやデッドリフトバージャンプでは明かに軽いウエイトや無負荷(体重のみ)に対するスピードとパワーの増強効果が見られます。

 この特性はトレーニングに活かすこともできます。高重量に対する最大努力と、軽量や無負荷に対する最大努力でのパワー発揮とをうまく組み合わせることによって、軽量や無負荷に対するポテンシエーション効果を引き出し、ハイスピード/ハイパワーなスピード筋力を向上させるというトレーニング法は、「コントラスト法」「コンプレックス法」「コンバインド法」等と呼ばれコーチや研究者の関心を集めています。

3)スピード筋力持久性の測定と評価。                                                

 中距離走や短距離走の後半の追い込みとか、ラグビー、サッカー、アメリカンフットボール、バスケットボール、テニス等々のボールゲームや柔道、レスリング等々の格闘技で連続的なハイパワー発揮を数10秒間にわたって持続しなければならない場合、高いスピード筋力を保ったまま運動を継続する能力が要求されます。スピード筋力が低下してしまうと高度なパフォーマンスを維持することはできなくなります。

 ですから絶対的なスピード筋力を高めるとともに、できるだけそれに近い値でできるだけ長く運動を続ける必要があります。このようなスピード筋力持久性はフィットロダイン®のパーセント表示機能を用いて測定することができます。

 ●一定の重量に対するスピードとパワーの最大値をまず測定します。軽すぎる重量を選ぶと何10回やってもスピードやパワーの低下がおこらず、有酸素持久力がメインとなってしまいますから、30秒から長くても1分以内にはっきりとしたスピードとパワーの低下が起る重量を選択して下さい。

 例えば、およそ2秒に1回のペースでスクワットジャンプやスプリットスクワットジャンプ(左右の脚を前後に開いた姿勢から、空中で前後の脚を入れ替えながらジャンプを繰り返す)を行うと20回で40秒~50秒程度となります。

 ●次にその重量に対するスピードとパワーの最大値が少なくとも最初の3回以内に出るように最大限努力させます。

 ●その後は数値のフィードバックなしにあらかじめ設定した回数(上の例では20回)を反復させます。

 ●メモリーを再生し、スピードとパワーがどのように低下したかを記録します。必要に応じてグラフを描きます。グラフはスピードとパワーの絶対値の他、パーセンテージのグラフも利用価値が高いようです。

 ●疲労係数=(最初の3回の平均値―最後の3回の平均値)÷最初の3回の平均値×100を求め、スピード筋力持久性の評価を行います。

●一定のパーセンテージ以下に低下するのは何回目か(例えば70%にまで低下したのは何回目か)によってスピード筋力の持久性を評価することもできます。





図4.スピード筋力持久性の評価(パワー持久力の測定)

   疲労係数=(最初の3回の平均値-最後の3回の平均値)÷最初の3回の平均値×100