レジスタンストレーニングの『質』(2) | S&Cスポーツ科学計測テクノロジー スポーツパフォーマンス分析

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2018.05.30コラム
レジスタンストレーニングの『質』(2)

【パフォーマンス向上のためのレジスタンストレーニングの『質』はリフティングスピードのモニタリングによって向上する】

◆リフティングスピードの低下は疲労した証拠

 この消防士の実験では血中乳酸の測定も同時に行われている。8~12レップ後の値は10.5~12.5mmol/Lにも達し、12RMで6レップ実施したセット後でも4.2mmol/Lであった。セット後の血中乳酸値と、リフティングスピードの低下率との間には、スクワットでr=0.97、ベンチプレスで0.95という非常に強い相関係数が見られ、セット前に1m/sで挙上できたウェイトに対するセット後の挙上スピードの低下率と血中乳酸濃度の間には、スクワットでr=0.93、ベンチプレスで0.97というこれも非常に強い相関が見られた。

 この結果は、リフティングスピードの低下は明らかに筋肉疲労によるものであり、このように疲労した状態でしかも実際の発揮スピードが「遅い」動作を強いることには少なくともスピードとパワーの向上を目指したトレーニングではほとんど意味がないと言えるだろう。


◆最大反復可能回数[RM]の限界手前でそのセットを中止すれば?

 12RMで12レップ行うとスクワットで46.5%、ベンチプレスで63.3%スピードが低下したが、6レップまでだとスピードの低下率はスクワットで20.2%、ベンチプレスで24.2%にとどまった。6RMで6レップだとスクワットとベンチプレスでそれぞれ41.9%、56.8%の低下率が、3レップだと19.6%、23.7%の低下率だった。

 スピードをモニターして、一定のレベルまでスピードが低下する前にそのセットを終了すれば、選手に無駄な疲労を起こさせず、しかも質の高いリフティングを反復させるのではないだろうか?こうした仮説にもとづいて行われたのが、次に紹介するイタリアの研究である。


 

◆わずか3週間週2回のトレーニングで1RMを10%向上させた高速トレーニングとは?

 20年以上のウエイトトレーニング経験を持つ平均42.5歳の男性20名を2つのグループに分けた。1RMの85%負荷を用いて、一方(高速群)は最大挙上スピードの80%以上を維持するようにし、他方(自己ペース群)には自分の好きなスピードでベンチプレスのトレーニングを行った。

 すべてのエクササイズの動作スピードをリニアポジショントランスデューサーでモニターし、高速群は、リフティングスピードがあらかじめ測定した85%1RMに対する最大速度の20%以下に低下した時点でただちにそのセットを中止させた。休息時間は2分とし、1レップ目からその速度さえ発揮できなくなった時点でセッションを終了させた。自己ペース群は1回のセットで反復できるだけのレップを行い、同じ2分間のレストで、1回も持ち上げられなくなった時点でセッションを終了した。

 これを週2回、3週間続けた結果、セッションの内容では、高速群は最初7セット×2.33レップしかできなかったのが9セット×3.17レップできるようになり、自己ペース群は最初7.98セット×7レップが9セット×8.33レップできるようになった。そして、トレーニング効果としては、高速群は、1RMを99.7㎏から109.8㎏と有意に10.2%向上させたのに対して自己ペース群は97.5㎏から97.7㎏と向上率は0.77%で有意ではなかった。また、リフティングスピードは高速群で有意に2.22%向上させたのに対して自己ペース群には有意なリフティングスピードの向上は見られなかった。