レジスタンストレーニングの『質』(3) | S&Cスポーツ科学計測テクノロジー スポーツパフォーマンス分析

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2018.05.30コラム
レジスタンストレーニングの『質』(3)

【パフォーマンス向上のためのレジスタンストレーニングの『質』はリフティングスピードのモニタリングによって向上する】



◆高速トレーニングでは筋活動がより活性化する

 この研究では筋電図も取っている。その結果をみると、高速群では自己ペース群に比べてきわめて高い筋活動が行われたことがわかる。コンセントリック局面の積分筋電図の値が、高速群は自己ペース群に比べて、三角筋では22.8%、上腕三頭筋では202.29%、上腕二頭筋で49.59%、大胸筋で7.31%高い活動レベルが見られた。このことから、高速トレーニングによって、自己ペースで行うよりも、多くのモニターユニットが動員され、それらの発火頻度が増し、モーターユニットの活動が同期化したと考えることができる。実際に行ったセット数やレップ数が少なくても、同じ85%1RMという負荷を用いて、より高速にエクササイズを実施し、スピードが低下した状態では無駄なレップを行わない、というスピード重視のトレーニングで、より質の高い筋活動を反復させたことが、トレーニング経験の豊富な被験者に対する3週間で10.2%以上という驚異的な効果を生んだと言えるだろう。

 

◆同じエネルギーでもまったく異なる質のトレーニングになる

 図2は、この論文に示された高速トレーニングと自己ペーストレーニングの違いを端的に説明した概念図である。トレーニングで費やされたエネルギー量は同じだと仮定すると、高速群は強度が高く量が少なかったのに対して、自己ペース群では強度が低く量が多かったというわけである。つまり、リフティングのスピードが2つのまったく異なる質的な差をもたらしたのである。



▲図2.高速でトレーニングしモニターされたリフティングスピードを手がかりに、無駄なトレーニングを行わなかったグループと自己ペースで挙がらなくなるまでトレーニングしたグループのトレーニングの質的違い

 

◆スーパー14のプロラグビー選手でも短期間でパワーを向上できる

 スーパー14(アフリカ、ニュージーランド、オーストラリアの3ヶ国から計14のクラブチームが集まり、南半球最強をかけて戦う世界最高クラスのラグビーリーグ)出場クラブに所属するニュージーランドのプロラグビー選手9名が、リニアポジショントランスデューサーを装着した40㎏のバーベルでベンチスロー(安全な方法で、スミスマシーン上でバーを投射するトレーニング)を4レップ×3セット、レスト2分で行った。

 7日間でスピードのフィードバックありの条件となしの条件でそれぞれ2セッションずつ行った結果、平均パワーが2セット目でフィードバックありが2.4%、3セット目で3.1%有意に高い値を示した。平均スピードでは1セットで1.3%、2セット目が1.1%、そして3セット目で1.6%有意に高い値を示した。

 この結果はリフティングスピードのフィードバックを受けることによって、こうした普段からトレーニングを積んでいるレベルの高い選手においても、たとえわずかであってもトレーニングの質を確実に高め、パワーを向上させることが可能なことを示している。同様のプロラグビー選手に関する長期のトレーニングの効果を調べた研究4)でも、4年間でベンチプレスのパワーの向上率が5%であったことを考えると、短期間のわずか2セッションで3.1%も高い値を示したことはきわめて興味深い結果である。この3セットにおけるわずか数パーセント高い質にこだわるトレーニングを何ヶ月、何年と継続していくことが後にいかに大きな差となるかは想像に難くないだろう。