体幹部(コア)のトレーニング | S&Cスポーツ科学計測テクノロジー スポーツパフォーマンス分析

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2018.05.30コラム
体幹部(コア)のトレーニング

【体幹部(コア)のトレーニング】



◆パフォーマンスと体幹部の役割

 最近、スポーツパフォーマンス向上のためのストレングス&コンディショニングプログラムにおいて体幹部トレーニング(コアトレーニング)の重要性が強調されるようになってきました。これまでも、フィットネスのトレーニングプログラムにおいて、腰痛防止や外見上の目的から体幹部、特に腹筋に対するトレーニングが重視され、さまざまなエクササイズが紹介されるとともに、その安全性や“効かせ方”について多くの考えが提出されてきました。それらの中には相反する見解や理論が存在し、何が正しいのか不明瞭となっている部分もあるようです。今回は、パフォーマンス向上のためのトレーニングという観点から体幹部トレーニングについて考えてみましょう。

 スポーツパフォーマンスの向上にとって、体幹部を強化する必要性は以下の6点にまとめることができます。

 第1は、姿勢の安定性です。胴の体重比は男女とも約48%あり、姿勢の変化による重心の動揺は大きなバランス変動を引き起こします。道具の加速・減速を伴う運動では重心の変動はさらに大きくなります。高速移動におけるこうした重心の安定性は、転倒しないというだけでなく、さまざまな運動の土台となる姿勢の保持や安定した視野の確保、そしてエネルギーの浪費を防ぐためにも重要であると考えられます。

 第2は、力の伝達です。スポーツにおける多くの動作は立位姿勢でおこなわれ、下肢筋によって生み出された力の地面からの反力なしに上肢の有効な力を発揮することは困難です。体操競技の跳馬や床運動ではこの逆のことが言えます。投擲、打撃、打突、押し、投げ、当り、かわしなど下肢で生み出された力を効率よく上肢へ伝達して、より高速な動作を生み出したり大きな力を発揮する必要があります。したがって下肢と上肢の連結部に位置する体幹部の力の伝達という機能がトレーニングされなければならないわけです。

 第3は、スピード&アジリティーにとっての意義です。急激な加速や短時間での停止、高速での方向転換時のバランス確保など2本の脚の運動だけで達成することは不可能です。

 第4はアラインメントと障害の予防です。腰痛をはじめとするスポーツ選手の障害が脊柱、骨盤、股関節部のアラインメントに起因することが指摘されています。こうした部位のストレスを軽減し、保護するためにも体幹部の強化は有効となると思われます。

 第5は、内臓や頭部の防御です。格闘技や球技における打突、衝突、落下による内臓のダメージや頭部の地面への衝突などを事前に食い止める効果が体幹部の強化に期待できます。

 最後に、トレーニング動作の効率化と障害予防が上げられます。体幹部の強化は特にクローズドキネティックなフリーウエイトによるエクササイズの効果を向上させ、メディシンボールを用いた強度の高いバリスティックなエクササイズや高強度プライオメトリクスにおいてそれらのトレーニング効果を高めるための前提となると同時に、これらのトレーニングによって生じる可能性のある障害を未然に予防する効果が期待できます。

 

◆トレーニングすべき筋群と機能

 体幹部というと、腹筋と背筋、という大雑把なイメージがあると思いますが、実際は、多くの筋群がそれぞれさまざまな形で関連しあって複雑な機能を果たしています。

 よく行われている脊柱の屈曲と伸展だけではこの複雑な機能を強化することはできません。脊柱の側屈、回旋、骨盤の前屈、後屈、左右への水平回旋、左右への側方回旋、股関節の屈曲、伸展、外転、内転、外旋、内旋が可動域全体にわたってバランスよくトレーニングされるようなコンディショニングプログラムの実施が基本と考えるべきでしょう。腸腰筋、腰方形筋、腹横筋などの緊張が他の筋の活動と区別して意識的に捉えられるように、さまざまな動作のなかで確認させていきます。ストレッチングやゆっくりとした体操的あるいは軽いメディシンボールを用いたエクササイズやマニュアルレジスタンス(徒手抵抗)でこれらの関節運動と筋の作用を感覚として確認することが有効です。

 こうすることによって、強化したい部分、例えば腹直筋と内外腹斜筋による腰椎の屈曲を、腸腰筋や大腿直筋による股関節屈曲と区別して鍛えることがより意識しやすく、かつ効果的に行えるようになるようです。

 

◆プログラムデザインの原則の適用

 腹筋の強化というと、仰臥位での自重負荷で回数をこなすことだけに意識が向くのはどうしてでしょうか?可動域全体にわたるプレストレッチを効かせた動作のためには仰臥位だけでは不十分です。立位や膝立ち姿勢も必要ですし、負荷を加えたクランチ、シットアップ、ケーブルクランチなどで6RM以下の重量を用いなければ筋力そのものが効果的に向上しないのは他の筋群と同様です。

 背筋も立位で行うフリーウエイトによるデッドリフト、グッドモーニングなどによってスポーツ動作により近い体幹動作の機能的なトレーニングを行うことが可能です。これらのエクササイズでは、腰椎部を保護するための腹腔内圧を高める働きのある横隔膜や腹横筋の優れたトレーニングにもなります。高血圧や心臓病と無縁な選手であれば息こらえによって効果を高めることができます。